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春夏秋冬〜泉谷しげるに“歌わせない・弾かせない”手法で最大のヒットを生み出したプロデューサー加藤和彦の手腕とは!?

2023.10.20

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ボブ・ディランもそうじゃないですか。
初期の頃はワー!っと歌ってるんだけど、そういう歌い方をやめるじゃないですか。
吉田拓郎もそうだよね。
いわゆる“歌い上げる気持ち悪さ”なんですよ。
それをすでに加藤和彦はわかってたんですよ。
俺はその時はわからないから「歌わせろ!歌わせろ!」って言ってね(笑)
ずっと盛り上がらないまま曲が終わっちゃって…内心「いいのか!?これで」と思いま
ドラムも入ってないし、ブルースハープは加藤さん自分で吹いちゃうし、俺にギターを弾かせないし…とにかくやらせないんですね。
つまり、熱い想いを具現化させない。
その“やらせない”ことが“センスの良さ”なんです。


泉谷しげるの最大のヒット曲であり代表曲である「春夏秋冬」は、1972年に発表された。
作詞作曲は泉谷本人だが、この楽曲を編曲しヒットに導いたのは当時プロデューサーとして活躍していた加藤和彦だった。
その頃の加藤と言えばサディスティック・ミカ・バンドなどを通じて海外の音楽事情に精通し、グローバルで洗練されたライフスタイルを貫いていた“ダンディズムの極地”のような存在だったという。
方や泉谷と言えば、体当たりのステージンク、歯に衣を着せぬ発言や“乱入”などがパブリックイメージとなっていた気鋭のシンガーソングライターだ。
泉谷と加藤のタッグは誰がどう見ても異色の組み合わせだった。
だが、そんな“水と油”のような二人が化学反応を起こし、「春夏秋冬」での仕事をきっかけに、その後も数々の作品を作り出してゆくのだった。
泉谷は1971年の11月、ライブアルバム『泉谷しげる登場』でデビューを果たした。
そして翌年の4月にスタジオ盤の1stアルバム『春夏秋冬』をリリースし、一気にその名を全国に広めてゆくのだった。
加藤はまさに“泉谷を売った男”だった。
泉谷は当時のことこんな風に振り返っている。

俺たちフォークのシーンは吉田拓郎とかがマイナーレコード会社から出てきた頃で、まだレコーディングのやり方などよくわかっていなかったんだよね。きわめて日本的な録音というものを“ギョウカイ”だか“ゲイノウカイ”だか何だか知らねぇが、わけのわからないスタジオのオヤジがよぉ、昔ながらのしょうもない習慣を押しつけていた時代だったんだよ。そんな時にミュージシャン側に立って「こういう風に録るんだ」と、レコーディングのやり方を教えてくれたのが加藤さんなんです。


泉谷のスタジオ盤1stアルバム『春夏秋冬』のプロデューサーに加藤を抜擢したのはレコード会社(エレックレコード)の社長だった。
「加藤にやらせろ!」「お前にレコーディングができるのか!?」
この二言で話は決まったという。
泉谷は「春夏秋冬」をレコーディングした日のことを鮮明に憶えていた。

彼が編曲してきたアレンジは最初、歌いづらかったですね。
イメージ的にはゆったりと歌うような感じの曲なのに…それを平気でタラ〜と流しちゃうんですよ(笑)
でも実はここが彼のセンスの良さ。
俺もそれにだんだん気づいていくんだけどね…いわゆる“歌い上げる気持ち悪さ”ってやつに。
実際にレコーディングスタジオでガー!と歌ってたら、加藤さんが「なに頑張ってんだか…」と鼻で笑うんです。
「てめぇ!ちゃんと歌ってなにが悪いんだ!この野郎!!!お前と俺とは違うんだ!!!」ってなったんだけど…まぁ後々のことを考えると、それが実に正解だったんです。



<引用元・参考文献『永遠のザ・フォーク・クルセダーズ ~若い加藤和彦のように』田家秀樹(ヤマハミュージックメディア)>




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