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まだデビューすらしていなかったサンタナがウッドストックに出演した経緯

2016.09.06

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1966年、高校を卒業したカルロス・サンタナは友人らとバンドを組んで演奏活動をしつつ、暇があればフィルモア・ウェストへと足を運んでいた。
そこに行けばポール・バターフィールドをはじめ、プロのステージを間近で見ることができたからだ。

あのころのおれは、バターフィールドが一番重要なブルース・バンドだと思っていた。連中の音楽が、リトル・ウォルターやシカゴやデルタに深く根ざしたものだったからだ。
エリックがクリームで登場し、それよりもはるかにリリカルなプレイを聴かせはじめるまでは、あのバンドが一番重要だった。


filmore_west

フィルモア・ウェストでは、オーナーであるビル・グレアムの意向により、日曜の昼はノーギャラのかわりに誰でもステージに立って演奏できるという、アマチュアにとってはいわば登竜門の場となっていた。入場料はたったの1ドルで、観客の多くは子どもとその母親だったという。

いつものようにサンタナが友人と足を運んだその日は、お気に入りのポール・バターフィールドとマイク・ブルームフィールド、それにグレイトフルデッドとジェファソン・エアプレインのメンバーが演奏をしていた。
すると、友人がオーナーであるビルのもとに行き、「ねぇ、ぼくの知ってるやつで、ティファナ出身のメキシカンがいてさ、そいつブルースとB.B.キングが好きなんだけど、ちょっと弾かせてやってくんないかな?」とお願いをした。
その結果、サンタナはマイクのギターを借りてセッションに参加できることとなる。
サンタナの演奏が気に入ったビルは、後日に正式なオーディションの場を設け、サンタナをフィルモア・ウェストお抱えのアーティストとして迎え入れるのだった。

はじめは前座だったが、ビルのお気に入りだったサンタナは他のアーティストがドタキャンしたり、喧嘩が起きて出演できなくなったりする度に出演の機会を与えられる。

「誰かが出られなくなると、ビルは決まっておれたちに「いいぞ。出てきてプレイしてくれ」と声をかけるようになった」


出演を重ねる度にサンタナのバンドは人気を集めていき、ついにはメインを務めるまでになる。
ビルによれば、レコードを出さずにフィルモアのトリをとったバンドは、あとにも先にもサンタナだけだったという。

1969年、ニューヨークの郊外、ウッドストックの農場で大規模なロック・フェスを開催する企画が動き始めた。
ところが出演者が思うように集まらず、計画は難航する。
そこで、アメリカのロックバンドに顔が利き、イベント制作の経験も豊富なビルのもとに、協力してくれないかという相談がきた。
ビルはあまりに無計画で大雑把なその構想を知るとフェスの失敗を確信したが、協力する代わりに1つ条件を出した。
サンタナを土曜の夜、つまりゴールデンタイムに出演させる、というのがその条件だ。
こうして、まだデビューもしていない無名のバンドが、ウッドストックという大舞台の一番いい時間帯に出演するという異例の大抜擢が決まるのだった。

8月15日から始まったウッドストック・フェスティバルは、ビルの協力もあって人気ロックバンドが数多く集まり、会場には40万人もの人たちが押し寄せた。

woodstock

サンタナの出番は2日目の土曜日、20時頃の予定だったが、スタッフに声をかけられると急遽ステージへと上がる羽目になった。
時刻はまだ14時、かなりの前倒しだった。

それでまぁステージに立って、人の海を、できるだけ遠くまで見渡してみたわけさ。肉と、髪と、歯と、手の海をね。
おれはただひたすら演奏した。なんとか音を外しませんように、リズムがちゃんとキープできますように、って神様にお祈りしながら。「とにかくそれだけお願いします」ってね。
ライヴの経験はたっぷりあったけど、あんな大人数の前で演ったことはなかった。
だってあのときは、あんなにもたくさんの人たちと心をつなげなきゃならなかったんだぜ。でもおれたちはなんとかやってのけた。




満足な演奏もできずにステージを去るバンドも少なくない中、サンタナはウッドストックのハイライトの1つに数えられるほど素晴らしいパフォーマンスを披露した(サンタナ自身はスライ・ストーンをハイライトに挙げている)。

ウッドストックから2ヶ月後の10月にリリースされたデビュー・アルバム『サンタナ』は、ウッドストックでの評判に後押しされて全米4位を記録、続く70年にリリースされた2ndアルバム『天の守護神』は6週連続1位の大ヒットとなる。
千載一遇のチャンスをものにしたサンタナは、ウッドストックという大舞台から鮮やかに羽ばたいていくのだった。


サンタナ『ウッドストック・エディション』
Sony


引用元:『ビル・グレアム ロックを創った男』ビルグレアム、ロバートグリーンフィールド著/奥田祐士訳(大栄出版)

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