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ジム・クロウチ物語②〜なぜか愛された“悪い奴”リロイ・ブラウンの足跡を追う〜

2016.02.14

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シカゴの南半分はこの街の中でも最悪の場所さ
あそこへ行くときは気をつけた方がいいぜ
リロイ・ブラウンという名の奴に

ヤツときたら“厄介者”なんてものじゃ済まない
身長は6フィート4インチ
ダウンタウンの女達はノッポのいい人って呼んでる
男達はヤツの名を“サー(Sir)”をつけて呼ぶ

リロイ・ブラウンはワルの中のワル
クソったれな街の中でも最悪の男
老いぼれのキングコングよりももっとワルで
ごみ捨て場の野良犬よりも卑劣な男

ヤツはギャンブラーさ
ケバい服がお気に入り
みんなの鼻先でダイヤの指輪をひけらかすのが大好き

特注のコンチネンタルを乗り回し
おまけにエルドラドだって持っている
32口径をポケットにねじ込み
靴には剃刀を隠してる


いきなりだが、この歌の主人公リロイ・ブラウンとはどんな人物なのだろう?
それは、1973年に夭逝したシンガーソングライター、ジム・クロウチが亡くなる半年前にリリースした「Bad, Bad Leroy Brown(リロイ・ブラウンは悪い奴)」の歌詞に登場する架空のキャラクターなのだという。
懐にはいつも 32 口径の銃を隠し持ち、靴にはカミソリを忍ばせるといった風体が描かれていて、一言で言えばギャングやチンピラみたいな輩なのだろう。
1977年には、アメリカで同名(Bad, Bad” Leroy Brown)のリングネームを持つプロレスラーが“大型黒人ヒール”として売り出された記録も残っている。

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そんな“悪い奴”のことを軽妙なテンポに乗せて歌った曲は、1973 年に全米No.1のヒットとなって以来、フランク・シナトラやドリー・パートンなどの大御所からも取り上げられて長きに渡って愛される歌となった。




先週の金曜日のことだ
ヤツはサイコロを転がしていた
バーの端っこの席にドリスという名の女が座っていた
奮いつきたくなるようないい女だ

ヤツはチラチラと視線を送る
すぐにトラブルが持ちあがった
つまりリロイ・ブラウンは学んだわけさ
やきもち妬きの女房にちょっかいを出すとどうなるかって

リロイ・ブラウンはワルの中のワル
くそったれな街の中でも最悪の男
老いぼれのキングコングよりももっとワルで
ごみ捨て場の野良犬よりも卑劣な男

取っ組み合いが始まった
二人を床からひき起こした時には
ヤツの身体はまるでジグソーパズル
かけらがいくつか無くなっていたぜ

リロイ・ブラウンはワルの中のワル
くそったれな街の中でも最悪の男
老いぼれのキングコングよりももっとワルで
ごみ捨て場の野良犬よりも卑劣な男


この歌を生んだジム・クロウチは、曲がヒットした同年に飛行機事故でこの世を去った。
作者の死によって“永遠に過去のもの”となったと思われたリロイ・ブラウンだったが…なんと、その架空のキャラクターは一人歩きをして翌年に復活を遂げていたのだ。
リロイ・ブラウンはいつの間にか大西洋を渡り、イギリスの人気バンドQUEEN(クイーン)の 3 作目のアルバム『Sheer Heart Attack』(1974)の B面 5 曲目で「Bring Back That Leroy Brown」の中で甦っていたのだ。



連れ戻せ!呼び戻せ!
呼び戻せ!あのリロイ・ブラウンを!(そうとも!)
連れ戻せ!呼び戻せ!
思い出せ!あのリロイ・ブラウンを!(戻って来い!)

無け無しの金まで全部賭けなよプレイボーイ
90ドルの微笑を浮かべたクールな親父のように
感謝のしるしに俺の金を持っていって良いから
それでもってアイツはさっさと街を出て行っちまった
あいつに近づいて 狙いを定めて 撃ち倒してやる
いい頃合を狙って撃つのさ

悪党のリロイ・ブラウンは常識なんて持ってやしない(あるもんか!)
アイツの脳みそは空っぽだが流儀はたんまり持ってるんだ
もうこんな刑務所の中にいるのは我慢できないぜ
お勤めからはさっさと抜け出してやるんだ
警察(サツ)の追っ手をかわして影に隠れてやる
俺は“生死を問わず”のお尋ね者になるのさ
ワォ!悪党のリロイ・ブラウン
わぉ!なんて悪党のリロイ・ブラウン(まったくさ!)
ルルベルおばさんはノイローゼになっちまった(ビッグママはノイローゼ!)
リロイがおばさんのかわいい子を連れていっちまったから
だが彼女が駅で奴に会った時
拳銃を奴の頭につきつけながらなんて言ったと思う?
俺の聞き間違いじゃなかったらこう言ったんだ
「悪い奴!悪い子ね!リロイ・ブラウン!」
「私はあんたを手に入れてやるわ!(恋人として!)」
あいつはまったく結構な騒ぎを引き起こしたのさ
それでもって なんと大統領に選ばれちまった(リロイを大統領に!)
この次にはあの悪党のお天気屋に出くわすだろう
今度はガタガタの薄いなめし皮みたいだろうさ
アイツは悪い!悪党のとんでもない奴なんだ!
あんたがアイツをどこから連れてこようとかまいやしない
あの悪党のリロイ・ブラウンを連れ戻してくれ!
奴に戻ってもらいたいのさ!


シカゴを舞台にジム・クロウチが生み出した架空のキャラクターが、歌詞の世界を飛び出して実在する悪役レスラーとして活躍したり、アメリカの大御所歌手に愛されたり、イギリスの人気バンドに呼び戻されたり…。
架空と現実の間(はざま)を行き来しながらリロイ・ブラウンは伝説の男となった。
もしかすると、彼は今もどこかで生きているのかもしれない。
いつの時代でも“悪い奴”はいるものだ。
また、時として“悪い奴”が愛されたりもするからこの世は不思議だ。

■「ジム・クロウチ物語③〜最愛の妻との出会い、夫婦デュオ、挫折の日々を乗り越えて〜」は2/21(日)に公開を予定しております。お楽しみに♪

Jim Croce『Original Albums…Plus』
Edsel Records

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