TAP the NEXT

カーネーション──4年ぶりの新作は、音楽体験のすべてを詰め込んだような濃密で痛快な傑作

2016.08.02

Pocket
LINEで送る

紙のようにペラペラだ
あっちが透けて見えそうなんだ
どちらかといえばそれは 何もないのと同じ
寂しいなこれじゃあんまりだ

こんなんじゃあんまりだ

(「まともになりたい」より)



2013年に結成30周年を迎えた、カーネーション。直枝政広(ボーカル/ギター)と大田譲(ベース/ボーカル)からなるバンドが4年ぶりに発表した、16作目となるオリジナル・アルバムが『Multimodal Sentiment』だ。ジャケット写真に採用されているのは、ジャンクな音響機器や録音機材・楽器・レコード・おもちゃ・雑貨・民芸品・酒……などなど、世間的には無駄と一蹴されてしまいがちなものだろうが、人生を形成する上で明らかで必要だったであろう宝物の数々が高く積み上げられた、ある種のモニュメントのようなヴィジュアル・イメージ。それは、このアルバムのまさしく多種多様なサウンドと、雑多に詰め込まれたカラフルなエッセンスを、そのまま具現化したようでもある。

直枝は鈴木惣一朗とのユニット〈Soggy Cheerios〉として活動したり、また大森靖子のプロデュースやライブ・サポートなども手がけてきたが、並行してカーネーションのライブ活動もコンスタントに行ってきた。2015年12月には、7インチ限定のシングル「アダムスキー/メテオ定食」を発表。シンセや打ち込みのビートも多用したサウンドは、2000年代以降に聞けたトリオ編成でのロックンロール・バンドという印象を大胆に払拭する、意欲的な楽曲だった。

そもそもカーネーションの音楽は、一筋縄にはいかない多岐にわたる音楽的バックグラウンドが楽曲や演奏のあちこちに表出していて、聴き手はそれをニヤリとしつつひとつずつ拾い上げていく感覚も楽しみのひとつでもあったが、この『Multimodal Sentiment』はどうだろう。ほぼ全曲の詞曲を手がける直枝のこれまでの音楽体験のすべてや、幼い頃から現在に至るまでに見つめてきた風景が、音と言葉になってドバドバととめどなくあふれ出てくるような勢いに圧倒される。それは「アダムスキー/メテオ定食」の制作がひとつのきっかけとなって、ある種のタガが外れたのだろうか。30年を超えるキャリアをもってして「まともになりたい」と歌う直枝の、どうしようもない情けなさやいくつになっても脱ぎ捨てられない迷いや惑いも、有り様を飾らずストレートにさらけ出す潔さ。そして60年代から2010年代までを自由に行き来するようなサウンドからは、影響を受けた音楽やカルチャーの文脈を辿る作業はさておいて、そこにまつわるロマンスとエッセンスを鷲掴みにしてぶん投げるような衝動を感じるのだ。

アルバムには大谷能生、大森靖子、川本真琴、佐藤優介(カメラ=万年筆)、sugarbeans、徳澤青弦、西川弘剛(GRAPEVINE)、張替智広(HALIFANIE、キンモクセイ)、松江潤といった豪華な面々がレコーディングに参加。大森靖子とは、彼女の「無修正ロマンティック ~延長戦~」から派生した「続・無修正ロマンチック ~ 泥仕合 ~」をデュエット。また、MVも制作された「いつかここで会いましょう」は、カーネーションの代表曲のひとつである「Edo River」(1994年)の続編といえる詩情を描いた楽曲となった。

「音楽にまつわる歴史のすべてとあらゆる無駄な妄想やレコードを愛してやまない勇気ある音楽馬鹿たちに本作を捧げたい」とは、このアルバムについて語った直枝のコメントだが、『Multimodal Sentiment』に聴けるヌケのいい言葉とサウンドに、なぜだかわからないが、理由もなく勇気をもらったような気分になったのは、やはり自分も重篤な音楽馬鹿という証なのだろうか。


考える時間が長すぎた
つまらぬ比喩を探していたんだ

(中略)

夜空に浮かぶ光のすべてをうけてとめてほしい
衛生と花火とアダムスキー型UFO そしてバーベキュー
OH 笑いながら泣いたりしてもいいよね?

(「アダムスキー」より)




カーネーション『Multimodal Sentiment』

カーネーション
『Multimodal Sentiment』

(CROWN STONES/日本クラウン)



カーネーション official website
http://www.carnation-web.com/

カーネーション「いつかここで会いましょう」 MV



Live Schedule
『Multimodal Sentiment』リリース記念ライヴ

10月3日(月)東京・渋谷 クラブクアトロ
出演:カーネーション
Special Guest:大谷能生 他

『ACOUSTIC CARNATION』
8月6日(土) 京都 SOLE CAFE
出演:カーネーション(直枝政広&大田譲)
9月3日(土)神奈川・江ノ島 虎丸座
出演:カーネーション(サポートDr:張替智広)
ゲスト:ブラウンノーズ Special Guest:大谷能生

詳細はカーネーション official websiteを参照ください。

Pocket
LINEで送る

スポンサーリンク

関連アーティスト

関連するコラム

[TAP the NEXT]の最新コラム

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑