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「TAP the COLOR」連載第187回
1950年代半ば。ティーンエイジャーたちがロックンロールに熱狂していた一方で、都会の夜のサウンドトラックであるモダンジャズは全盛期を迎え、以後ジャズ・ヴォーカルの世界にも名盤が続々と誕生。LPが普及したことや洒落たジャケットデザインも見逃せない。ロマンティック&スインギン。大人の世界へようこそ。
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リー・ワイリー『Night in Manhattan』(1951)
印象的なジャケット写真がすべてを表現しているような、都会の夜と洗練された世界が刻まれた、素晴らしすぎるジャズ・ヴォーカルの大名盤。時にクール、時に優しく響くリー・ワイリーのちょっとハスキーな声。そこに流れるように絡んでくるトランペットやピアノ。こんな至福をスマホに入れて聴けるなんて夢のようだ。
トニ・ハーパー『Night Mood』(1960)
トニ・ハーパーの代表作はタイトルの通り、夜をテーマにした1枚。ジャケット写真を眺めているだけで、どこまでも幻想的な気分になってくる。マーティ・ペイチのオーケストラをバックに、しっとりとスタンダード・ナンバーを歌い上げていくトニ。アート・ペッパーの参加も嬉しい。『Lady Lonely』(1959)とのカップリングで入手したい。
ジュリー・ロンドン『Your Number Please』(1959)
その美貌とハスキー&スモーキーなヴォイスの歌声から漂う圧倒的な色気。ポピュラー歌手のジュリー・ロンドンがアンドレ・プレビンの編曲とストリングスで録音した、夜のムードいっぱいのジャジーなアルバム。照明を落とした部屋や深夜のドライブで耳を傾けたい。なお、ジュリーは1940年代に映画女優として活動後、50年代に歌手に転向して成功を掴んだ。
アニタ・オデイ『Pick Yourself Up with Anita O’Day』(1956)
モダン・ジャズ・ヴォーカルを代表する女性歌手の一人であり、ハスキー・ヴォイスの魅力を最初に示唆した人でもあるアニタ・オデイ。アニタと言えば、1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルの模様を綴ったドキュメンタリー映画『真夏の夜のジャズ』での歌唱が有名。そこで披露した「Sweet Georgia Brown」は本作に収録。余談だが、あの時話題になったコスチュームのドレスは、午後5時のティータイムの出番ということを念頭に着用したそうだ。
*参考/『ジャズ・ボーカル名曲名盤』(別冊スイングジャーナル/1993年)
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