セックス・ピストルズのドラマー=ポール・クックを父に、カルチャー・クラブのバック・ヴォーカルとして活動したジェニを母に持つレゲエ・シンガー、ホリー・クック。再結成後のザ・スリッツにセカンド・ヴォーカリスト/キーボード奏者として参加したことで注目を集めた彼女は、パンク・シーンと、独自に発展してきたUKレゲエ・シーンの融合と化学反応を続けてきた歴史の申し子のような存在といえるだろう。
UKダブの第一人者であるデニス・ボヴェールらも参加した、2011年発表のファースト・アルバムは、上質なラヴァーズ・ロックが詰め込まれた快作として、レゲエ愛好家たちから高い評価を得た。その後、ギャズ・メイオール率いるスカ・バンド=トロージャンズのゲスト・シンガーとしても来日するなど多彩に活動してきたホリー・クックが、セカンド・アルバム『TWICE』を完成させた。
ザ・スリッツの中心人物であり、48歳の若さで急逝したアリ・アップに捧げるナンバーで幕を開ける本作は、ストリングスを中心としたオーケストレーションも多用され、一層と優麗さを増したラヴァーズ・ロックが展開。タブラやスティールパンも織り交ぜられたアレンジからは、様々な人種のコミュニティが影響を与えあって成熟する、UKならではのクロス・カルチャーの深みも浮き彫りにする。そして何より、クールでアンニュイな印象の中に時折チャーミングさも覗くホリー・クックの歌声は、愛すべき魅力を放ち、アルバム全体の訴求力を上げている。
たとえばシャーデーが世界中を虜にしたように、ホリー・クックの歌声も多くの人々の心を捕らえるのもそう遠くないことかもしれない。
Hollie Cook「Looking For Real Love」 MV
Hollie Cook「Twice」 Audio
Hollie Cook「That Very Night」