いつの時代でも、ステージの上のスーパースターに人は憧れる。
カーペンターズの「スーパースター」も、ひとりの少女がステージ上のミュージシャンを憧れ、焦がれる歌だ。だが、レオン・ラッセルが書いたこの名曲を、リチャード・カーペンターは妹カレンのイメージに合うよう、歌詞の一部を書き直していたのだ。
歌の主人公の女性は、遠い昔を思い出す。
そう、彼女がスーパースターに出会った少女時代。
彼女はコンサートに足を運び、セカンド・ショーが始まる前に恋に落ちたのだ。
今でもその歌は聴こえてくるが、それはラジオのスピーカーからだ。
♪愛してるって言ったの、覚えていないの?
またここへ戻ってくるからって言ったじゃないの♪
カレンの歌声から想像するのは、「愛してる」という言葉は、実際の言葉ではなく、歌の文句だったのではないか、ということだ。
そして「戻ってくる」というのは、コンサートでやってくることだ。
だが、レオン・ラッセルが書いた歌詞は「文字通り」だったのである。
スーパースターは少女を抱いたのだ。
そして「愛してる」と囁き、「またこの町にやってくるから」と約束したのである。
この歌を最初にレコーディングしたのは、デラニー&ボニー。
1969年に発売されたシングル「カミン・ホーム」のB面として収録されたその曲のタイトルは「スーパースター」ではなく「グルーピー」だった。
♪あなたとまた一緒にいられるその時が、どんなに待ち遠しいか♪
カーペンターズの歌でそう歌われる歌詞は、リチャードが書き直したものだ。レオン・ラッセルの原曲は、もっと赤裸々な表現だった。
そう、「いる」ではなく「寝る」だったのだ。
歌詞を一部書き直してまでも、取り上げたい。
レオン・ラッセルの曲は、そこまでリチャードの心を揺さぶったのだろう。そしてリチャードの魔法で、この歌は、カレンの世界で、見事に生まれ変わり、輝いた。
(このコラムは2014年8月28日に公開されました。)
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