1974年12月12日。
ひとりの男がザ・ローリング・ストーンズを去っていった。
『スティッキー・フィンガーズ』『メイン・ストリートのならず者』『山羊の頭のスープ』『イッツ・オンリー・ロックンロール』というストーンズの黄金期ともいえる4枚のアルバムでリード・ギターをつとめたミック・テイラーである。
音楽観の相違とも、キース・リチャーズとの不仲が原因とも言われたが、本当の原因はわからない。
9歳でギターを弾き始めたというミック・テイラーは、早熟の天才だった。
彼がジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズのライブ会場の客席に座っていたのは、15歳の時である。その夜、リード・ギターのエリック・クラプトンは急病のため、ステージに姿を見せていなかった。ヤードバーズ脱退後、ブルース・ブレイカーズに参加していたクラプトンのギターは、グループの華である。クラプトンのギターが聴けないブルース・ブレイカーズなんて。。。という状況に、会場に観客たちも白けた気分になっていた。
そんなステージに、ミック・テイラーは飛び入り参加し、クラプトンのギターを完全コピーして弾いてみせたのである。
ブルース・ブレイカーズは、クラプトン脱退後、後にフリート・ウッドマックに参加するピーター・グリーンを迎え入れ、彼が脱退すると、まだ17歳だったミック・テイラーを参加させることになる。
そう、ミック・ジャガーにミック・テイラーのことを紹介したのは、ジョン・メイオールだった。
1969年、3年ぶりのワールド・ツアーに出たいと考えていたストーンズは、問題を抱えていた。ギタリストのブライアン・ジョーンズが薬物による逮捕などから、バンドを解雇されてしまっていたのである。
ミック・ジャガーは「レット・イット・ブリード」の録音にミック・テイラーを参加させる。そして数日後、ミックはもうひとりのミックに、ストーンズの新しいギタリストに選ばれたことを電話で告げることになる。
現在では、ストーンズのコンサートに客演参加するなど、すっかりストーンズの一員に戻った感のあるミック・テイラー。今日は、『山羊の頭のスープ』に収録されている「ウインター」での、彼の名演でも聴いてみたい気がする。