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コールドプレイがエンターテイメントの持つ力を表現した50回目のスーパーボウル

2019.02.04

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アメリカで最も注目が集まるイベントのひとつに、NFLの優勝決定戦「スーパーボウル」が挙げられる。
なかでも前半と後半の間に行われるハーフタイムショーは、マイケル・ジャクソンが出演した1993年の27回大会がきっかけとなり、世界中の音楽ファンから注目を集めるようになった。



そして90年代以降にはU2やポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズなど、世界中の著名アーティストが登場する「音楽の祭典」としても知られるようになる。

2016年に開催された記念すべき50回目のスーパーボウルで、ハーフタイムショーに出演したのはコールドプレイだった。
彼らはイギリス出身だが世界中で6000万枚以上のアルバムを売り上げ、アメリカでも根強い人気を誇っている。
コールドプレイはこのとき、自分たちだけでなく、他のアーティスト共に出演することを望んだという。

それはヴォーカルのクリス・マーティンのある想いから生まれたことだった。

「一体感を演出したかった。僕たちの世界、音楽界にあるできるだけ多くのものを取り入れようと考えたんだ」

彼は全米のみならず世界中の人たちが観る50回目のスーパーボウルという大舞台で、音楽の力によって人々がつながる瞬間を生み出そうとしたのである。
クリスがその舞台にふさわしいゲストとして出演を依頼したのは、ビヨンセとブルーノ・マーズだった。

コールドプレイとはジャンルが異なる二人であったが、クリスの趣旨に賛同して快諾したという。
そうして作り上げたステージは、多くの人を驚かせるものになった。



7万5000人の大観衆に迎えられたコールドプレイは、観客をフィールドに呼び入れて、自身の大ヒット曲「Viva La Vida」や「Paradice」を演奏した。
そして祝祭的なメロディの大合唱と圧倒的なパフォーマンスで、すぐさま観客の心たちの心を一つにし、さらに観客を驚かせる仕掛けを披露する。
3曲を歌い終えると、ブルーノ・マーズとビヨンセに4分もの間、ステージを譲ったのである。
スーパーボウルにおいて、メインアクト以外が単独で歌うことは異例のことだ。
しかし二人は気負いすることなかった。
2015年にヒットした「Uptown Funk」を堂々とブルーノが歌って踊り、次にビヨンセもマイケル・ジャクソンを模した衣装で、女性たちの団結をテーマにした「Formation」を歌った。
ブルーノもビヨンセも、彼らが望んでいた「一体感」を、それぞれのスタイルとメッセージによって表現したのである。
そして最後にはコールドプレイも演奏に加わり3人で再び「Uptown Funk」を、肩を組みながら歌い踊り、会場からは大きな歓声が上がった。
踊りが苦手のクリスだったが、ブルーノの強い希望で共に踊ることになったという。

「多くの人はダンスが下手な僕が、素晴らしい二人のダンサーに挟まれていることに注目するだろうけど、それこそが僕が意図したことだったんだよ。」

「僕はダンスが下手なんだ。でも僕は表現の自由を宣伝する素晴らしい広告塔でもある。『どう思われようといい、今最高に楽しいから踊るんだ』ってね」


人種も性別も違う三人が歌い踊ることで、クリスは音楽が人を繋ぐことをステージ上で体現していたのだ。

歴代のハーフタイムショウの出演者たちの映像を背景に、「Up&Up」を最後にショーは終わった。



他者への愛情の美しさを歌ったこの曲で、彼らはハーフタイムショーを作り上げた先人たちへのリスペクトを捧げ、ステージを降りたのである。

このステージは世界中の音楽ファンから賞賛を浴びる一方、ブルーノとビヨンセの鮮烈な印象から「コールドプレイは脇役だった」という心無い意見も多くあったという。
しかし、スーパーボウル後の会見でクリスはそんな反応を笑い飛ばしている。

「ビヨンセとブルーノをよりカッコよく見せることができたなら僕は幸せだよ」

(文・吉田ボブ)


(文中のクリス・マーティンの発言は The Guardianでのインタビューを引用しています)


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