「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

ミュージックソムリエ

星空を眺め、誰かを想いながら聴きたいラヴ・ソング「イエロー」~コールドプレイ

2017.10.16

Pocket
LINEで送る

夜空の星が美しい季節。
星を見上げると、人はどうもロマンティックな気分になるようだ。
星をテーマにしたラヴ・ソングは世界中に、それも星の数ほどあるだろう。
「見上げてごらん夜の星を」と歌ったのは、坂本九。1963年の日本で、星をテーマに歌って大ヒットした。

一方、イギリスで「夜空の星を見上げてごらん」と歌い、2000年に大ヒットしたのが、コールドプレイの「イエロー」だ。彼らのメジャー・デビュー・アルバム『パラシューツ』に収録され、コールドプレイの名を一躍有名にした代表曲でもあり、今では結婚式の定番ソングとも言われている。


ところで、コールドプレイのメンバーは全員が、イギリスの階級社会においてアッパーミドル・クラス(上流中産階級)の出身だ。ヴォーカルのクリス・マーティンは、パブリック・スクール(私立の全寮制男子校)を出た後、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)に入学、そこでジョニー・バックランド(ギター)、ガイ・ベリーマン(ベース)、ウィル・チャンピオン(ドラム)と出会い、1997年にコールドプレイを結成する。

デビュー当時の彼らのサウンドは、U2やレディオヘッドとよく比較されたが、クリス・マーティン自身も彼らの音から影響を強く受けていることを否定しない。“ロックは労働者階級のもの”とする風潮が強かったイギリス社会において、「パブリック・スクールの生徒でもバンドがやれると、レディオヘッドから励まされた」とも語っている。

甘く切なく美しいラヴ・ソングを書くことに定評がある、クリス・マーティン。
UCLを優秀な成績をおさめて卒業した彼だが、2002年にニューアルバム『静寂の世界』のプレス向け全曲解説の中で、このように語っていたのが微笑ましい。

「曲はだいたい女の子のことばかりさ。おかしいよね。心の中には世界経済の落ち込みとか醜い環境破壊のことなんかもあるのに。いつだって最大の関心事は誰かを想うことなんだからさ」
ー「ロックの名言2」シンコーミュージック・エンタテイメントより

夜空の星を見上げてごらん
ほら、
こんなにも君のために輝いているのを
君のするすべてのことを照らして
黄色く輝いていたんだ

そうして僕は
君のために歌を書いた
君のすべてを祝して
「イエロー」という歌を

じゃあ 次は僕の番さ
あぁ なんて素晴らしいんだ
すべてが黄色く輝いていたよ

君の肌
あぁ 君の痩せた体が
何か美しいものに変わっていく
もう わかるよね
こんなにも君を
愛しているということを




黄色という色を星の光に使うのは、私たち日本人にはあまり馴染みがないが、欧米では陽光の光についてしばしばyellow(黄色)が用いられる。この黄色は黄金色に近いけれど、gold(金色)よりはもっと柔らかな光なのだろう。
ライヴでこの曲が演奏される時には必ず、会場全体が柔らかな黄色の光に包まれるのが美しい。

(2016年グラストンベリー・ライヴより)


誰かを想うことから平和は始まる。
星空を眺め、大切な誰かを想いながら聴きたい1曲だ。


Coldplay『Parachutes』
Parlophone

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[ミュージックソムリエ]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ