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くるりの「Liberty & Gravity」に受け継がれた”変な歌”、春日八郎の「お富さん」

2014.08.15

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日本の3大ビート・ソングといえば、発表順に笠置シヅ子の「東京ブギウギ」、春日八郎の「お富さん」、それに坂本九の「上を向いて歩こう」の3曲だろう。

「東京ブギウギ」は文字通りブギウギのビート、「上を向いて歩こう」は忌野清志郎が必ずこう言って紹介したように、”日本の有名なロックンロール”である。

「お富さん」は作曲した渡久地政信が生まれ育った沖縄・奄美の民謡で、ダンスミュージックでもあるカチャーシーに、日本流のハンドクラップ(手拍子)が鳴り響き、高揚感はジャマイカのスカにも通じている。

1954年に爆発的にヒットした当時は、リズムの裏に合わせてハネる歌の心地よさで、幼児から大人にまで盛んに歌われた。
どこかアナーキーで意味不明な歌詞は、子どもばかりか大人にも”変な歌”と受けとめられたが、歌舞伎の名場面から引用した台詞のイメージと、日本語の語呂の面白さだけで十分だった。

はっぴえんどを結成して日本語のロックを完成させる大瀧詠一は、10歳で洋楽に出会うまでは地元の岩手県で山の景色を眺めながら、「お富さん」ばかりを歌っていたという。

イキ(粋)なクロベイ(黒塀) ミコシ(見越し)のマーツ(松)に
アダ(仇)なスガタ(姿)の アライガミ(洗い髪)
死んだ筈だよ お富さん
生きていたとは オシャカ(お釈迦)さまでも
シラヌホトケ(知らぬ仏)の お富さん
エッサオー ゲンヤーダナー(源冶店)



しかし春日八郎が亡くなると、今でも歌い継がれている「東京ブギウギ」や「上を向いて歩こう」に比べて、「お富さん」はだいぶ存在感が薄れてしまった。

ところがここに来て発売前からPVが評判になり、”変な歌”と話題を呼んでいるくるりの「Liberty & Gravity」に、そのエッセンスが受け継がれているのが明らかになってきた。

哲学研究者で思想家の内田樹が、昨年末に急逝した大瀧詠一と交わしていた最後のメールには、奇しくも「お富さん」が出てくる。

大瀧さんからの最後のメールは僕がニール・ヤングの Till the morning comes は春日八郎の『お富さん』と同じメロディーなのでは・・・と書いたことについてのものでした。ニール・ヤングはこの番組を見ていたのではという。(注1)

大瀧が”この番組”と指摘したのはハワイ出身のジャズ・ビブラフォン奏者、アーサー・ライマンがテレビに出演して演奏した「Otome-San(お富さん)」のことだ。
それを観ると確かに、ニール・ヤングの「Till the morning comes」と「お富さん」が繋がっている感じがするのだ。

くるりを率いる岸田繁は、そのニール・ヤングを自分のロックのルーツの一人として挙げている。
そしてニール・ヤングがセックス・ピストルズのジョニー・ロットンに捧げた曲で、カート・コバーンが遺書に引用したことでも有名な「マイマイヘイヘイ」にインスパイアされて、「ヘイ!マイマイ!!」という曲も書いている。

古語の”まいまい”、すなわちかたつむりを歌ったくるりの「ヘイ!マイマイ!!」は、なぜかオーストリアのウィーンで2007年にレコーディングが行われた。

新曲の「Liberty & Gravity」についても岸田は、昨年ウィーンに滞在していた時に作ったことを日記で明らかにしている。
しかもなんの偶然か、かたつむりの写真付きだ。

岸田日記Ⅱ #7

お盆休み的なムードが街角に漂うなか、はっきりしない空模様と、凄まじい湿気にうんざりしながらも、夏が終わってしまうのは嫌だなぁと、毎年のように思う。


picture_pc_5b7fd0a79ed46e3abd55023ea98b1d0aくるい1

「Liberty&Gravity」を書き上げたウィーンのホテル。てか、滞在中にアコギで夜中作ってた曲です。


picture_pc_3e83141b5b4582633fed685847b1527くるり2 (くるり official 2014/08/12 16:58)

岸田はさまざまな文化が交じり合うウィーンという都市について、日記の中で「アコーディオンやバンドネオンを使った街頭ミュージシャンが多く、イタリア系だったり東欧系だったり、トルコ系だったり居酒屋は特に人種の坩堝である」と記している。

「Liberty&Gravity」は要所々々に、「よいしょっ!」という祭り囃子の合いの手やハンドグラップを多用し、懐かしい日本を感じさせつつも、強力なロック・ビートでドライブしながら組曲のように展開していく。
そこに岸田繁らしいセンチメンタリズムと、クールなラップまでも織り込んで、21世紀ならではの日本のビートソングが誕生した。

あらゆる音楽に真面目に向き合ってきた岸田の個人的な音楽史が、「Liberty&Gravity」という無国籍ハイブリッド・ポップには、これでもかとばかりに注ぎ込まれている。

世界中の、全く言語も文化も違う音楽に、少しでも何らかの感銘を受けた時、遺伝子レベルでの記憶や、全く繋がっていなかったものがたまたま繋がったりとかするんだ。遠く離れた国の、言葉もわからない音楽を聴いて、涙が溢れたり、笑い転げたりすることが楽しいんだよ。(岸田繁)


ニール・ヤングはこの番組を見ていたのでは?


『お富さん』とほぼ同じメロディーなのでは・・・

たまたま繋がったりとかするんだ・・・


(注1)引用元 追悼「大瀧詠一の系譜学」内田樹 目から鱗のナイアガラー。2013-12-31 12:43:29(http://togetter.com/li/610081

<こちらもお読み下さい>
➔ マイ・マイ・ヘイ・ヘイ~燃え尽きていくロックンローラーたち
➔ 心がうきうきするもの、平和への叫び、世界へ響く歌、派手な踊り、楽しい歌……「東京ブギウギ」
➔ 【スペシャルインタビュー】仲井戸“CHABO”麗市〜RCサクセションはなぜ「上を向いて歩こう」を「日本の有名なロックンロール」と呼んだのか?

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