「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the LIVE

グリーン・デイを一躍有名にした観客との泥の投げ合い

2015.09.08

Pocket
LINEで送る

1980年代後半にアメリカのカリフォルニアで結成された3人組のバンド、グリーン・デイ。
彼らの名を一躍有名にしたのが1994年に催された、ウッドストック’94でのパフォーマンスだ。

その年の2月にアルバム『ドゥーキー』でメジャー・デビューを果たしたグリーン・デイは、若者を中心にじわじわと人気を伸ばし、いつ火が点いてもおかしくない状況にあった。
そんな中で舞い込んだのが、ウッドストック’94という大舞台だ。

1969年に開催された伝説のフェス、ウッドストック・フェスティバルが25年ぶりの復活するとあって、ザ・バンドやサンタナといったオリジナルのラインナップはもちろん、当時は参加しなかったボブ・ディラン、さらにはレッド・ホット・チリペッパーズやナイン・インチ・ネイルズといった新しいバンドまで、幅広い世代が集まった。

グリーン・デイが出演したのは最終日となる8月14日。
ステージこそメイン・ステージではなかったが、注目の若手パンク・バンドをひと目見ようと、会場には数多くの観客が集まった。

彼らはステージに上がるとのっけからエネルギー全開で畳み掛けるように2曲を演奏し、会場をヒートアップさせた。
そして、ギター・ボーカルのビリー・ジョー・アームストロングがMCで発した一言が、ライブを予想だにしない方向へと導くのだった。

「お前ら泥でも投げ合ったらどうだ、どんだけバカなことをできるかってのを見せてくれよ!」


会場は晴れていたものの、連日の雨で足下はぬかるんでいた。
そしてビリーの呼びかけによって、前列のファンを中心に泥の投げ合いが始まるのだった。

気がつけば彼らは全身泥まみれになっていた。
グリーン・デイのエキサイティングな演奏と泥遊びによってアドレナリンがピークに達した彼らは、次第にステージにも泥を投げ込むようになる。
絶え間なく泥が飛んで来る中でも、グリーン・デイはその状況を楽しむかのように演奏を続けた。
一方でスタッフたちは泥や興奮したファンの対応に追われるのだった。



最後の曲となる「ペーパー・ランタン」でついにビリーはギターを置き、俺も泥遊びに混ぜろと言わんばかりに、ステージに投げ込まれた泥を観客席に投げ返し始める。
さらには手を大の字の広げて雨あられのような泥を浴びたり、ズボンを下ろして客席に尻を向けたりなどといったパフォーマンスで会場を盛り上げた。

しばらく観客とのやり取りを楽しんだビリーは、最後にこの収集がつかない状況をあっさりと締めてみせた。

「お前らが『うるせえ、引っ込め』って言って俺たちは演奏をやめる。いいな、1、2、3…」

「うるせえ、引っ込め!!」

「オーケー、俺たちは帰る、じゃあな」




前代未聞の滅茶苦茶なステージによって悪名を馳せたグリーン・デイだが、それが原因でビリーは母親との関係が疎遠になったり、ベースのマイクは警備員に頭のおかしくなったファンと間違えられて殴られたりなど、その代償も大きかった。

とは言え彼らのパフォーマンスは“マッドストック”と呼ばれて大きな話題となり、その模様がペイパービュー(有料番組)として配信されると数百万回も見られたと言われている。
そして『ドゥーキー』の売り上げを大きく後押しし、最終的にはアメリカ国内だけで500万枚以上を売り上げる大ヒットとなるのだった。

<コンサート全編>


Green Day『Dookie』
Reprise Records

Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the LIVE]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ