story_140823

TAP the STORY

マーク・ノップラー(ダイアー・ストレイツ)〜寂れたパブで見る夢

2014.08.23

Pocket
LINEで送る

僕はいつだって、困難な状況の中で自分を表現する方法を見つけられる人に惹かれてきた


1977年前半、27歳のマーク・ノップラーは彼自身もその方法を見つけようともがいていた。もちろん彼にとっての表現は音楽だが、それをもっと多くの人々の耳に届けたかったのだ。1973年にロンドンに出てきてからは主にパブで演奏を続けていたが、先の見えない状況だった。音楽では食べていけず、カレッジの講師の職に就いて3年が経っていた。一緒にバンドをやっている弟デイヴィッドとベーシストのジョン・イルズリーの男3人でフラットをシェアして暮らしていた。

当時彼らの住んでいたロンドン南東部のデットフォードには寂れたパブがあった。店の片隅で無名のバンドがディキシーランド・ジャズのスタンダードやルイ・アームストロングの曲などお決まりのレパートリーを演奏していた。彼らは郵便配達人、製図工、積算士、教師、そういった様々な仕事をしている人たちだった。マークはそのさえないバンドの演奏を聴きながら思った。

僕の心を打ったのは、僕がその演奏についてどう感じようが関係なく、彼らは自分たちを表現しているということだった。そして、その男たちは曲が終わると「どうもありがとう」に続けて「僕らはサルタンズ・オブ・スウィングです」と言うんだ。それが僕にはおかしくってね。だって、彼らは絶対に君主(サルタン)なんかじゃないからね。セーター姿のちょっと疲れたオヤジたちなんだから(笑)


その名前とのギャップを笑いながら、マークは自分たちのバンドの置かれた立場と彼らを重ね合わせていた。そして、そんなパブの光景を描いた曲が生まれる。それは、成功を収められなくても、パブやクラブで少ない客相手に大好きな音楽を演奏し続けている無数のバンドへのトリビュートでもあった。

その年の7月、マークの27歳の最後の月に、ダイア・ストレイツは市内の小さなスタジオで「Sultans Of Swing」を含む5曲のデモを録音する。有名ラジオDJのチャーリー・ギレットが番組でそのデモをかけると、ダイア・ストレイツは年末までにレコード契約を得ていた。


先の見えない状況だった
ロンドンでマークが加わっていたバンドのひとつ、ブリューワーズ・ドゥループはマークとダイア・ストレイツのドラマー となるピック・ウィザースを含むメンバーで1973年にアルバムを録音。1989年に『The Booze Brothers』として遅ればせながら陽の目を見た。

Sultans Of Swing
リズム・ギターを担当した弟デイヴィッド・ノップラーは「Sultans Of Swing」が大ヒットになるとは思いもしなかったと回想する。「じつは、もともとあの曲はピアノで書かれた曲なんだ。それが「Greensleeves」(イングランド民謡)ぽい、50年代のリズムのグルーヴが一緒になったような奇妙なハイブリッドに変わっていった。まったく風変わりな曲だったからね」(2003年のインタビュー)

uijy75003-m-01-dl

ダイアー・ストレイツ
『Dire Straits』


TAP the POP 2周年記念特集 ミュージシャンたちの27歳~青春の終わりと人生の始まり〜

Pocket
LINEで送る

スポンサーリンク

関連アーティスト

関連するコラム

[TAP the STORY]の最新コラム

このコラムへの感想・コメントを書く

Pagetop ↑