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「TAP the COLOR」連載第122回
「音と風景は一つだ」という言葉がある。壮大な音楽探求の旅人たちは、それをアメリカのルーツミュージックから聞こえる土埃で実感することもあれば、奥深いラテン音楽の熱気や躍動で知ることもある。そしてヨーロッパ的で絵画的な美学を心に描くことになる英国音楽の旅。音楽を通じて世界の風景を知ることは、この上なく素晴らしい体験なのだ。
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マイク・オールドフィールド『Tubular Bells』(1973)
英国が生んだ世界的コングロマリット、ヴァージン。その始まりがレコードショップやレコード会社だったことは有名だが、代表リチャード・ブランソンの自伝によると、第1号契約アーティストであるマイク・オールドフィールドは当時文無しのミュージシャンで、スタジオや楽器に関する費用を負担するだけでなく印税の前払いまでしたという。そして気が遠くなるような2300回ものレコーディングを経て完成した本作は大ヒットした。夢のある話だ。
ヴェイパー・トレイルズ『Vapour Trails』(1979)
2曲目の「Don’t Worry Baby」は邦題「サーフサイド・フリーウェイ」として、あの小林克也司会の『ベストヒットUSA』のオープングテーマ曲として余りにも有名。イントロを耳にするだけで、無数のレコードジャケットが流れる映像を思い出す人が多いはず。それくらいこのイメージが日本ではAORブームとともに定着した。しかし実はこのグループ、英国出身のミュージシャンたちが集まって本作を録音したというから驚きだ。
ジューダス・プリースト『British Steel』(1980)
ヘヴィメタルの象徴的存在とも言えるジューダス・プリースト。ロブ・ハルフォードのパフォーマンスやツインリードギターによる硬質なサウンドで、1979年からムーヴメント化したNWOBHMシーンの顔役として人気が急上昇。その後のLAメタルへの影響力も計り知れない。本作はバンドの最初のヒット作で、タイトルのクールさもあってブリティッシュ・メタルの名盤として必ず紹介される。この頃から80年代半ばにかけてが全盛期だった。
ロキシー・ミュージック『Avalon』(1982)
まさに英国ロマンを感じさせるバンドのラスト作。ブライアン・フェリーの美学が貫かれた大傑作でもある。1972年にグラムロック一派としてデビュー。以後、ブラック・ミュージックやニューウェーヴを取り込みながら、美しいジャケットワークが象徴するような独自のヨーロッパ風景を描いた。好感度な感性が音作りにきっちりと反映する貴重なアーティスト。ヒット曲「More Than This」は、ソフィア・コッポラの東京映画『ロスト・イン・トランスレーション』のカラオケシーンでも登場した。
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