★ダウンロード/ストリーミング時代の色彩別アルバムガイド
「TAP the COLOR」連載第170回
ブルーズの歴史を振り返ろうとする時、黒人女性シンガーたちによる「クラシック・ブルーズ」が始まりと思われがちだが、それはブルーズの録音史における順番に過ぎない。本当はここに紹介する「カントリー・ブルーズ」のミュージシャンたちからスタートしなければならないのだ。ブルーズを知りたければ、絶対に避けて通れないのが彼ら。壮大な音楽探求の旅へようこそ。
あなたの好きな色は?〜TAP the COLORのバックナンバーはこちらから
ブラインド・レモン・ジェファーソン
テキサス出身のカントリー・ブルーズのスターがブラインド・レモン・ジェファーソンだ。初録音は1925年末〜26年初めと、ブルーズマンたちの中では最も古い。1920年代生まれであるあのブルーズの王様B.B.キングのアイドル的存在だったことでも有名。モダン・ブルースの父と称されるTボーン・ウォーカーは少年時代にブラインド・レモンの手を引いて行動をサポートしていた。29年までに約100曲を吹き込んだが、本盤はそこから厳選された歴史的録音集。
チャーリー・パットン
ミシシッピ・デルタ・ブルーズの創始者こそがチャーリー・パットンだ。強烈な声はのちのハウリン・ウルフを思い浮かべる人も多いが、実際にウルフはパットンからギターを教わっていた。40歳を過ぎた1929年に初吹きこみ。本盤は30年代半ばまでの録音から厳選されている。スリーピー・ジョン・エステスは「アンプなんてない時代に、パットンの声は屋外の500ヤード離れた場所からでも聞くことができた」と証言。絶対に聴かなければならない1枚。
ミシシッピ・ジョン・ハート
デルタ・ブルーズマンによる1928年に行われた伝説的な録音全13曲。ブルーズ以外にもバラッドやスピリチュアル、フォークソングなどもレパートリーにしていた「ソングスター」と呼ばれる人だ。以来、録音には恵まれなかったが、1963年に研究家たちに再発見されて再び吹きこみを開始。70歳を過ぎてスポットライトを浴びることになった。戦前のカントリー・ブルーズマンたちにはこういう人が何人もいた。
ロバート・ジョンソン
1990年に発売されてベストセラーを記録した伝説のブルーズマンのコンプリート録音集。1936年11月と1937年6月のセッションで録音した29曲全41テイクを収録。ブルーズとは何か?が体験できる物凄い1枚。未公表だった本人の写真がジャケットになったことでも話題に。サン・ハウスからギターを学ぶと同時に、シティ・ブルースからも影響を受けた。そのプレイは革新的だった。ちなみにキース・リチャーズやブライアン・ジョーンズはロバート・ジョンソンのレコードを初めて耳にした時、ギター奏者は二人だと思っていたという。クロスロードでの悪魔と取引、女のトラブルで毒殺といった伝説が必ずネタになる人だが、これからも音楽ファンの永遠のロマンであり続ける。1938年8月16日死去、享年27。
(こちらもお読みください)
ストーンズやツェッペリンが100万ドル積んで欲しがったロバート・ジョンソンの“3秒半”
クロスロード〜悪魔と取引する場所、そして失った女を想う男のBLUESについて
*参考/『ブルースCDガイド・ブック2.0』(小出斉著/ブルース・インターアクションズ)
(『THE BLUES』シリーズはこちらでお読みください)
『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(Feel Like Going Home/マーティン・スコセッシ監督)
『ソウル・オブ・マン』(The Soul Of A Man/ヴィム・ヴェンダーズ監督)
『ロード・トゥ・メンフィス』(The Road To Memphis/リチャード・ピアース監督)
『デビルズ・ファイヤー』(Warming By The Devil’s Fire/チャールズ・バーネット監督)
『ゴッドファーザー&サン』(The Godfathers And Sons/マーク・レヴィン監督)
『レッド、ホワイト&ブルース』(Red, White & Blues/マイク・フィギス監督)
『ピアノ・ブルース』(Piano Blues/クリント・イーストウッド監督)
【執筆者の紹介】
■中野充浩のプロフィール
https://www.wildflowers.jp/profile/
http://www.tapthepop.net/author/nakano
■仕事の依頼・相談、取材・出演に関するお問い合わせ
https://www.wildflowers.jp/contact/