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「TAP the COLOR」連載第178回
ブルース(正確にはブルーズ)を聴いたり目の前の演奏に接したりすることは、言うまでもなく一つの体験であると同時に、それは時と場所を巡る旅でもある。スタート地点はミシシッピ川、綿花畑、ハイウェイ61……といったところだろうか。長い旅路では様々な人生、苦悩、歓喜といった風景を見ることになる。旅人たちはそれを決して忘れることはできない。
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ロバート・ジョンソン『The Centennial Collection』
このコーナーで再三紹介しているブルーズ界、いやすべての音楽の伝説的存在であるロバート・ジョンソン。悪魔と取引してギターの腕を磨いたというクロスロード伝説は永遠のロマン。だが長年の研究によると、幼少時代を過ごした町に戻ってアイク・ジネマンというギタリストの指導でテクニックを学んだと言われている。本盤は1936年のサンアントニオと1937年のダラスでの完全録音集。1990年に発売されてベストセラーになったコンプリート盤は同じ曲の複数テイクが順に並んだ構成だったが、こちらは正式テイクを並べた上でアウトテイクがまとめて聴ける構成ということで紹介。
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ロバート・ジョンソンの“クロスロード伝説”や“悪魔との契約説”はなぜ広まったのか?
マディ・ウォーターズ『The Complete Plantation Recordings』
ミシシッピ・デルタのストーヴァル農園で働く男マッキンリー・モーガンフィールドの伝説的な録音をまとめた本盤は、マディの原風景をとらえた1941年の8月と1942年6月のドキュメントだ。マディへのインタビューも聞ける。戦前の南部ブルーズやアパラチアのヒルビリーなどアメリカの民俗音楽を街頭や農場で録音し、分析研究で多大な実績を残したのが、ジョン&アラン・ロマックス親子だった。これらの経験と自信が男に決意させたのだろう。1943年、マッキンリー・モーガンフィールドはデルタを出てシカゴへ向かう。“マディ・ウォーターズ”の誕生だ。
(詳しくはこちらのコラムで)
農園で働く男はロバート・ジョンソンの代わりに録音して“マディ・ウォーターズ”になった
ハウリン・ウルフ『Howlin’ Wolf』(1962)
吠える狼。シカゴのチェス時代、マディ・ウォーターズのライバルでもあったハウリン・ウルフ。190㎝近い身長と120㎏の体重。そして荒々しくて大きなダミ声。何もかもスケールがデカい。本盤は1960〜61年中心の録音集。ストーンズがカバーした「The Red Rooster」、クリームがカバーした「Spoonful」、ドアーズがカバーした「Back Door Man」など歴史的名曲が並ぶ。相棒ヒューバート・サムリンの存在も光る。
ジョニー・ラング『Lie to Me』(1997)
本来なら、彼をこの流れで語るのには無理がある。しかし、まだ16歳だったあの頃からちょうど20年が経ったということで、再評価すべき時なのかもしれない。90年代後半に盛り上がった10代少年少女たちによるティーンエイジ・ブルーズの看板だったジョニー・ラングのデビュー作。サニー・ボーイ・ウィリアムソンの「Good Morning Little Schoolgirl」など熱さを感じる好盤。ブルーズ愛は続くセカンドで爆発。『ブルース・ブラザース2000』にも出演した。寡作家で、ソウル色を強めながら現在も活躍中。そろそろ本格的なブルーズ・アルバムを作ってほしい。
*参考/『ブルースCDガイド・ブック2.0』(小出斉著/ブルース・インターアクションズ)、『CROSSBEAT Presents スライド・ギター』(五十嵐正監修/シンコーミュージック・エンタテイメント)
(『THE BLUES』シリーズはこちらでお読みください)
『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(Feel Like Going Home/マーティン・スコセッシ監督)
『ソウル・オブ・マン』(The Soul Of A Man/ヴィム・ヴェンダーズ監督)
『ロード・トゥ・メンフィス』(The Road To Memphis/リチャード・ピアース監督)
『デビルズ・ファイヤー』(Warming By The Devil’s Fire/チャールズ・バーネット監督)
『ゴッドファーザー&サン』(The Godfathers And Sons/マーク・レヴィン監督)
『レッド、ホワイト&ブルース』(Red, White & Blues/マイク・フィギス監督)
『ピアノ・ブルース』(Piano Blues/クリント・イーストウッド監督)
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