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ザ・フーの「無法の世界」が日本で発売された日

2019.10.10

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1971年(昭和46年)10月10日、ザ・フーの「Won’t Get Fooled Again(無法の世界)」(ポリドール)が日本で発売された。
同年の洋楽/邦楽ヒットソングといえば…

【洋楽】
1位「Joy To The World 」/ スリー・ドッグ・ナイト
2位「Maggie May」/ロッド・スチュワート
3位「It’s Too Late」/キャロル・キング

【邦楽】
1位「わたしの城下町」/小柳ルミ子
2位「知床旅情」/加藤登紀子
3位「また逢う日まで」/尾崎紀世彦


1971年、日本では学生運動や安保闘争の火が燻っていた。
NHK総合テレビが全番組カラー化を実施し、『仮面ライダー』の放映がスタート、第48代横綱・大鵬が引退表明し、マクドナルド日本第1号店が銀座にオープン、そしてアポロ14号の月着陸に世界中が湧いた年でもある。


みんなが通りに出て闘い 旗を振る扇動者が古い権力者たちを追い出す
そして今度は旗を振っていた連中が 反対する人々を裁判にかけて判決を下すんだ
ショットガンが火を噴く音が歌のように聴こえてくる



この「Won’t Get Fooled Again(無法の世界)」は、ザ・フーの最高傑作と言われている5thアルバム『Who’s Next』のラストナンバーとして収録された。

バンドが同曲を初めてステージで披露したのは、1971年の4月、ロンドンのヤング・ ヴィック劇場だった。当時、彼らは1969年にリリースしたロックオペラの伝説的アルバム『Tommy』に続く一枚『Lifehouse』の制作に取り組んでいた。

しかし作品は完成することなく…その断片曲を集めてリリースされたのが『Who’s Next』だった。 シンセサイザーを大胆に使用したサウンドアプローチは、ステージでギターやドラムを破壊するというエキサイティングなパフォーマンスを得意とした彼らにとってまさしく“革命的”な楽曲だった。

無機質なシーケンサーのループとは対照的な躍動感溢れるメンバーの演奏がなんとも印象的な一曲である。

「革命について異を唱えている歌だ。革命なんて長い目で見ればただの革命にすぎず、多くの人が傷つくだけだ。」


この曲について作者のピート・タウンゼントはこんな発言を残している。

2006年、この歌は夢敗れた革命家たちのテーマソングとしてアメリカの保守派総合雑誌『ナショナル·レビュー』で“保守的なロックソング・ベスト50”において1位に選ばれている。しかし、それに対してピート·タウンゼントはこんな言葉を自身のブログに綴って怒りを露わにした。

「この歌は革命を非難する歌じゃない。あらゆる人間の行いがそうであるように、革命というものは予測のつかない結果をもたらす。自分の見たいものだけが見られるとは思わないことだ。」



新しい体制には敬意を表そうじゃないか 革命の成功を祝う声も聞こえる
俺はそれを笑顔で眺めながら 昨日と同じようにギターを弾くんだ
そして俺はこう心に誓うんだ
もう二度とダマされないぞって そう二度とダマされやしないぜ!


1970年代初頭の日本では、安保闘争・学生運動の熱が少しずつ冷めてゆく中、一部の若者たちの間には得も言われぬ敗北感と挫折感が漂い始めていたという。

パンタロンやマキシスカート、そしてシースルールックが流行し“ヒッピー族”が街を闊歩しながらフォークソング口ずさんでいた時代に、海の向こうのロンドンでこの歌は生まれた…

「政治家に対しても革命家に対しても、僕という人間の人生の中心に横たわっているものは決して売り渡すことはできないし、どんな立派な大義にも吸収されることはできないっていうことを歌っているんだ。」(ピート・タウンゼント)

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