60年代の中頃以降にアメリカのヒットチャートを賑わせたイギリスのバンド“ゾンビーズ”をご存知だろうか?
1962年にイングランドのハートフォードシャーで結成された彼らは、1stシングル 「She’s Not There」(1964年リリース) でデビューを果たす。
そのデビュー曲がイギリスでは12位、アメリカとカナダではいきなり2位を記録し、その後、短命ながらも(本国よりも)北米を中心に人気を博したバンドとして音楽シーンにその名を刻む存在となる。
そんな彼らが1965年にリリースした6thシングル「Whenever You’re Ready」のB面曲「I Love You」を、1967年に日本のグループサウンズバンド“ザ・カーナビーツ”がデビュー曲として日本語カヴァー(邦題:好きさ好きさ好きさ)し、一躍人気者となった。
そんな日本での盛り上がりを知ることもなく…同年、彼らはレコード会社を移籍し(ビートルズの人気にあやかろうと!?)アビーロードスタジオで2ndアルバム『Odyssey & Oracle』のレコーディングを始める。
しかし、諸事情により途中でスタジオが使えなくなったり、レコーディング中にメンバー間の関係が悪化し…翌年1968年、アルバムの完成とほぼ同時にバンドは解散状態となる。
彼らにとって(事実上の)ラストアルバムからの“最後のシングルカット曲”としてリリースされたのが、この「Time Of The Season(二人のシーズン)」だった。
バンドの不穏な空気はセールスにもそのまま反映され…本国イギリスのみでリリースされていたアルバムとシングルはチャートを賑わすこともなく不発に終わった。
そんな“先の見えない状況”を受けて、当時アルバム『Odyssey & Oracle』(1968年)のアメリカ発売を見送る方針でいたレコード会社CBSだったが、以前から彼らの魅力に惹かれていたプロデューサーのアル・クーパーがこの楽曲を気に入り「必ず売れるはずだ!」と異例の進言をしたという。
彼の予想通り、アメリカでシングルカットしたところ…翌1969年に全米3位を記録する大ヒットとなる。
このように(事実上)解散してしまっているバンドの曲が大ヒットするというのは珍しく、ポップス史においての“のちの語り種(ぐさ)”となっている。
当時、レコード会社は彼らに対して「何とかバンドを存続できないか?」と強く要請をしたという。
しかし、当時リーダーのロッド・アージェントの決意は固く再結成はされなかった。
そんな中、この曲の大ヒットを受けて偽物バンドがゾンビのように出現し「全米ツアーを行なった!」という噂が飛び交ったりもしたというから驚きだ。
その後、ボーカリストのコリン・ブランストーンはソロアーティストに、ロッドは自身の名を冠した新バンド“アージェント”を結成。
1977年、1989年の“一時的な再結成”をのぞいてパーマネントな活動再開はなかったが、2004年になってロッドはコリンとのデュオによるゾンビーズ名義のアルバムをリリースしている。
来日公演は、2001年にコリンとロッドのデュオが、2010年にコリン、2011年と2012年そして2015年にはゾンビーズ名義で行っている。
まるでゾンビのように死んだり蘇ったり…“名は体を表す”とはよく言ったものだ。
<引用元・参考文献『ロック&ポップス名曲徹底ガイド②』音楽出版社>