1973年生まれの自分にとっては残された音源や映像でしか触れることが出来なかったもの。
それが1967~1973年辺りまでのロックの黄金時代。
(音楽好きの先輩である)おじいちゃん達は、同時代に生で浴びることが出来たんだなぁ。
そういう風に、おじさんは時々うらやましく思うのです。
例えばこんな音楽。
ハンブル・パイによる1973年のライブは、ローリング・ストーンズ「ホンキートンク・ウーマン」のカバー。
後にスーパー・スターとなるギタリストのピーター・フランプトンが抜け、スティーヴ・マリオットのソウル趣味がより濃厚になった頃。
ソウル・レヴューから影響を受けた歌うMCの鮮烈さ。
「俺たちはローリング・ストーンズに敬意を払いたい!」
そして粘っこくエネルギッシュな演奏。
本作はソウルとロックをぶつけ合った音楽の熱さが伝わる逸品です。
『キング・ビスケット・ライヴ』というタイトルで、1996年にCDリリースされました。
こんなライブを生で体験出来た人は羨ましい。
だがしかし、そんなわたしを拾ってくれる神様が居た。
ヴィンテージ・トラブル(Vintage Trouble)、彼らは凄いです。
映像を見ているだけで握りこぶしを振るってしまうほどの、圧倒的エネルギー。
渋くブルージー、パワフルでありながらカチッ、カチッとキッチリ合わせるバンド・アンサンブルは、整合性があってスタイリッシュ。
そして、ヴォーカルのタイ・テイラーは本物のソウル・シンガーという組み合わせ。
まさしく英国ロックのイメージと重なるものです。
そして流れ出す音楽は60年代を踏襲したブルージー且つソウルフルなロックンロール。
ロック・ファンならば、血沸き肉躍ること間違いなし。
個人的には「ピーター・フランプトンが抜けた後のハンブル・パイにジェームス・ブラウンが加入したような音」と形容したい。
この曲でのパワフルな歌唱から、タイ・テイラーの凄みは十分伝わるはず。
更に会場を引き込むパフォーマンス能力も素晴らしい。
スタートからよどみなく煽り文句を繰り出し続ける、そのアクションから目が離せません。
AC/DCやローリング・ストーンズのオープニング・アクトを務めた経験は伊達じゃない。
TAP the POPでは8月にも紹介されましたが、アメリカ出身のロック・バンドです。
<SOUL is ALIVE【第1回】ヴィンテージ・トラブル──あらゆる世代の心を揺らす、熱すぎるソウル>
ソウル・シンガーとして活躍していたタイ・テイラーを中心に、それぞれに音楽キャリアを積んでいたミュージシャン達が集まって、2010年に結成。
これまでに2枚のアルバムを発表しています。
セカンド・アルバムの『華麗なるトラブル』では、ブルー・ノートより”レーベル初のロック・バンド”という触れ込みでメジャー・デビュー。
ロック度が高いファーストに比べると、セカンドはマイケル・ボルトンとオーティス・レディングを足して割ったような大人なソウル・ナンバーが中心になっていますが、どちらも素晴らしいアルバムです。
ハンブル・パイはもういないが、わたしには、ヴィンテージ・トラブルが居る。
(ミュージックソムリエ 旧一呉太良)