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「TAP the COLOR」連載第176回
いつの時代にもブルーズに取り憑かれた男たちがいる。そしてブルーズに抱かれた女たちがいる。ブルーズは音だけでない。それは色気であり体臭だ。哀しみであり明日への希望だ。ブルーズをどこまでも愛した男と女たちに登場してもらおう。
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ジョニー・ウィンター『Johnny Winter』(1969)
「100万ドルのブルーズ・ギタリスト」として登場したジョニー・ウィンターのメジャー1作目。コロンビアとの契約金は実際は30万ドルだったという。また、直前に地元のマイナーレーベルに吹き込んだ『The Progressive Blues Experiment』があり、こちらも超強力なブルーズへの愛が感じられる。テキサスとミシシッピで育ち、サン・ハウス、ロバート・ジョンソン、マディ・ウォーターズなどからスライド奏法の影響を受けた。アルバムジャケットもクールだ。77年にはマディの復活にも一役買った。2014年7月、70歳で死去。
ボニー・レイット『Bonnie Raitt』(1971)
音楽一家に生まれたボニーは、学生時代にプロモーターのディック・ウォーターマンと知り合い、ブルーズマンたちと交流。フレッド・マクダウェルやシッピー・ウォレスといった伝説たちに可愛がられ、スライドギターを教わった。本作はそんな彼女のデビュー作。ロバート・ジョンソンやトミー・ジョンソン、シッピー・ウォレスのナンバーを収録。ジュニア・ウェルズがハーモニカで参加している。売れない時代が長く続き、一時は酒やドラッグに溺れたボニーだが、遂に1989年の『Nick Of Time』で大ブレイク。グラミー賞をさらった。音楽性を変えず、昔以上に豪快なスライドギターが鳴っていたことに、ボニーのブルーズ魂が感じられた。現在も新作をリリースし続けている。
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ブルース・ブラザース『Briefcase Full of Blues』(1978)
破滅型のコメディアン、ジョン・ベルーシと相棒のダン・エイクロイドのブルーズ愛から生まれた本気のユニット、ブルース・ブラサース。バックを務めるメンバーも伝説だらけ。番組『サタデー・ナイト・ライヴ』で人気が爆発。ツアーも話題を呼び、タイトルが秀逸なこのデビュー盤も79年1月にナンバーワンとなってしまった。それだけではない。翌年には映画化されるのだ。ジョン・ベルーシは82年3月、33歳の若さで他界した。
(詳しい話は下記のコラムで)
ジョン・ベルーシとダン・エイクロイド〜旅と悲しみから生まれたブルース・ブラザースの絆
ブルース・ブラザース〜33歳で逝った伝説のジョン・ベルーシ
スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル『Couldn’t Stand The Weather』(1984)
黒人たちはブルーズを離れ、ロッカーたちもブルーズを見捨て、誰もブルーズなど聴かなくなっていた80年代。ブルーズにどっぷりと浸ったSRVの登場は衝撃的だった。南部のサーキットで腕を磨き、1983年にメジャーデビュー。凄まじいロック・ブルーズはMTVで軟弱化したシーンを鍛え直した。その後の若手ブルーズマンたちの道を切り拓いた功績は余りにも多い。本作はセカンドで、フレディ・キングやアール・キングのナンバーを収録。「Tin Pan Alley」から漂うブルーズの体臭をぜひ感じてほしい。ドラッグで一時リタイアするも89年に復活。これからの活躍が期待された矢先の90年8月、飛行機事故で死去。まだ35歳だった。
(『THE BLUES』シリーズはこちらでお読みください)
『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(Feel Like Going Home/マーティン・スコセッシ監督)
『ソウル・オブ・マン』(The Soul Of A Man/ヴィム・ヴェンダーズ監督)
『ロード・トゥ・メンフィス』(The Road To Memphis/リチャード・ピアース監督)
『デビルズ・ファイヤー』(Warming By The Devil’s Fire/チャールズ・バーネット監督)
『ゴッドファーザー&サン』(The Godfathers And Sons/マーク・レヴィン監督)
『レッド、ホワイト&ブルース』(Red, White & Blues/マイク・フィギス監督)
『ピアノ・ブルース』(Piano Blues/クリント・イーストウッド監督)
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