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「TAP the COLOR」連載第248回〜PINK〜
1990年代以降、ビルボードのアルバムチャートは売り上げに基づいた集計方法に変わった。さらにゼロ年代に入るとネット配信が普及してCDやアルバムが売れなくなった。その影響もあって現在のチャートはほぼ毎週のようにナンバーワンが入れ替わり、すぐにトップ10圏外へランクダウンしてしまう(その代わりに年に数枚だけビッグヒットが生まれる)。だが70〜80年代はナンバーワンになること自体が困難で、言い換えればそれらは「時代のサウンドトラック」として確かに機能していた。4月にはどんなアルバムがナンバーワンになったのだろう?
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スティクス『Paradise Theatre』(1981)
ボストン、ジャーニー、フォリナー、REOスピードワゴン、TOTO、サバイバー、エイジアなど、日本では売れ線の「産業ロック」と揶揄されたこともあるが、70年代後半から80年代半ばにかけてこの種のバンドとサウンドがヒットチャートを席巻。ロック初心者だった当時の中高生世代には青春期のサウンドトラックとして欠かせないものになった。スティクスも日米において人気が高く、本作は彼らにとって唯一のナンバーワン(3週)。「The Best of Times」「Too Much Time on My Hands」がシングル・ヒットした。ちなみに有名な「Mr. Roboto」は次作『Kilroy Was Here』(1983)に収録。
サウンドトラック『Chariots of Fire』(1981)
アカデミー作品賞を獲得したオリンピックを扱った名作。海岸を駆け抜けていく短距離ランナーたちの姿に、あの有名なシンセサイザーの音が聞こえて来るシーン。音楽はギリシャ生まれのシンセサイザーの巨匠、ヴァンゲリス。風景や心情を見事に奏でたサウンドトラック盤はナンバーワンに(4週)。2012年ロンドン五輪の開花式では、Mr.ビーンが指1本芸を披露して世界に再び広まることに。
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サウンドトラック『Footloose』(1984)
80年代のサントラブームを象徴する1枚。ハーバート・ロス監督は「MTVの感覚を念頭に置いて作った」というだけあって、サウンドトラックはすべての撮影を終えてから各場面のイメージに合わせてアーティストたちが曲作りをしたそうだ。ドラマの展開や人物との動きに音楽が見事に一致していたのはそういうわけだ。『フットルース』のサントラ盤は、1984年4月21日に全米チャートでナンバー1に到達。その後10週間トップをキープ。900万枚以上をセールスした。ケニー・ロギンスのタイトル曲、マイク・レノ(ラヴァーボーイ)とアン・ウィルソン(ハート)のデュエット「Almost Paradise」、ボニー・タイラーの「Holding Out for a Hero」などが有名。
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サウンドトラック『Wayne’s World』(1992)
ブルース・ブラザースを生んだ人気バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』(以下SNL)から、1989年に再びエクセレントな二人組が誕生した。マイク・マイヤーズとダナ・カーヴィーのコンビによる『ウェインズ・ワールド』だ。ウェインの自宅の地下室をスタジオにしたCATV向けの海賊放送という設定で、ロックとパーティが大好きな二人がホストになって毎回ゲストを招いて繰り広げられる寸劇トーク。SNLから飛び出したキャラクターが映画化されるのは、やはり『ブルース・ブラザース』以来12年ぶりのことだった。本作(2週1位)からはクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」がリヴァイヴァル・ヒットを記録。
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