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「TAP the COLOR」連載第26回
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雑誌『LIFE』と、そこで働く人々がネット企業による買収でリストラに翻弄される中、主人公ウォルターは家族や愛、そして自らの人生のために遂に“動く”ことを決意。そんな公開中の映画『The Secret Life of Walter Mitty』(邦題『LIFE!』)には、ひときわ印象的なシーンがある。
見知らぬ国の悪天候の中、泥酔した操縦士のヘリコプターに乗り込むかどうかで迷う場面だ。日頃の妄想癖が幸いして寸前で行動に移すウォルター。そんな彼のサウンドトラックとして祝福のように降り注いでいたのは、孤独な宇宙のブルーを彷徨う名曲「Space Oddity」。
苦しみを知る音楽は、いつも何かを救済してくれる。不安に一筋の光を与えてくれる。それを象徴するかのような秀逸なシーンだった。今回紹介する4枚のアルバムも、今までどれほどの人々の魂を救い、希望へと導いたのだろうか。そう信じることをこれからも忘れたくはない。
デヴィッド・ボウイ『Space Oddity』(1969)
昨年10年ぶりのアルバムをリリースしたボウイ。その長いキャリアのスタートとなったのがこのサイケデリック・フォーク的な作品。当時はアポロ11号による人類初の月面着陸もあり、表題曲が大ヒット。キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』からの影響も有名。
ちなみに、こちらは2013年に「人類初・宇宙で録音撮影されたミュージックビデオ」として話題になった映像。宇宙飛行士クリス・ハドフィールド氏が、実際に国際宇宙ステーション内で製作したもの。歌ったのはもちろん「Space Oddity」。
ザ・フー『Tommy』(1969)
こんなにも様々な表情を持つバンドは珍しい。モッズカルチャーの顔役、そして本作のような文学的なロック・オペラ、さらには大音量ライヴ・バンドとしての実力、加えて枝葉のようにメディアミックスしながら広がったしたたかなビジネス。そんな彼らの最高傑作の一つ。
エルトン・ジョン『Madman Across the Water』(1971)
作曲家エルトンと作詞家バーニー・トーピンによる黄金期の1枚。見せ物的なスーパースターになる以前こそ、隠れた名曲多し。中でも「Tiny Dancer」はキャメロン・クロウの映画『あの頃ペニーレインと』で、迷えるロックバンドのツアーバスのシーンで感動的に使用。
ローリング・ストーンズ『Black and Blue』(1976)
当時、ロン・ウッドを新メンバーに迎え入れたストーンズ第三章の幕開け的作品。ワルなR&Rやレゲエナンバー以上に、「Memory Motel」「Fool to Cry」といったメロウな曲が本作のロマンス。インナージャケットで夜のビーチに佇むメンバーの姿もそんな世界観を象徴。
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