★ダウンロード/ストリーミング時代の色彩別アルバムガイド
「TAP the COLOR」連載第355回〜PINK〜
1990年代以降、ビルボードのアルバムチャートは売り上げに基づいた集計方法に変わった。さらにゼロ年代に入るとネット配信が普及してCDやアルバムが売れなくなった。その影響もあって現在のチャートはほぼ毎週のようにナンバーワンが入れ替わり、すぐにトップ10圏外へランクダウンしてしまう(その代わりに年に数枚だけビッグヒットが生まれる)。だが70〜80年代はナンバーワンになること自体が困難で、言い換えればそれらは「時代のサウンドトラック」として確かに機能していた。5月にはどんなアルバムがナンバーワンになったのだろう?
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レッド・ツェッペリン『Presence』(1976)
ツェッペリンのアルバムはどれも重要作だが、中でも最も“硬質”な音作りで知られるのが本作(2週1位)。ギター、ベース、ドラム以外の楽器をほとんど使わず、ヘヴィメタルの元祖的サウンドを聴かせる。時の流れとともに作品に対する評価が高まった。印象的なジャケットデザインはヒプノシスによるもの。「テーブルの上にオブジェのようなものが乗っている。でも実はオブジェではなくて、ブラックホールのような虚無の空間なんだ。非常にバワフルで、誇りに思える作品だ」(ストーム・トーガソン)。なお、ツェッペリンのアルバムセールスは凄まじく、全米だけで1億1000万枚以上を売り上げている(歴代5位)。
アヴリル・ラヴィーン『The Best Damn Thing』(2007)
2002年、17歳でリリースしたデビュー作『Let Go』が世界で2000万枚以上のセールスを記録。一躍、カナダ出身のロック少女の名が知れ渡った。続く19歳での『Under My Skin』は全米1位を獲得。こちらも世界で1300万枚上を売り上げて、一過性の話題と人気でないことを証明。アヴリルはゼロ年代ロックのトキメキとなった。本作はそんな中でリリースされた待望のサード作(2週1位)。ナンバーワンヒット「Girlfriend」を生んだ。
マドンナ『Hard Candy』(2008)
2019年6月に4年ぶりのニューアルバム『Madame X』を発表するマドンナ。1982年にNYのダンスポップシーンから飛び出したばかりの頃、誰がこんなことを想像できたであろうか。時代の音を常に吸収・消化し続けた結果、ポップの女王は遂に最強のエンターテイナーになった。本作(1週1位)は彼女の長い人気を形成するワン・ピース。マイケル、プリンス、ホイットニー亡き今、2020年代へ突入するマドンナの動向が注目される。
マライア・キャリー『E=MC²』(2008)
2010年代になってそれまでの人気が急落。最近ではスキャンダルネタが目立ち、音楽的話題が少なくなったマライア嬢。だが歌のうまさは超一級。本作は現在のところ、彼女にとって最後!?のナンバーワン・アルバム(1週1位)。なお、ここで上のマドンナとのチャート記録を比較しておこう。まずはシングル。マドンナのトップ10ヒット26曲/No.1ヒット12曲に対し、マライアはトップ10ヒット10曲/No.1ヒット18曲。アルバムではマドンナのトップ10が13作/No.1が8作に対し、マライアはトップ10が12作/No.1が6作。ちなみにマドンナのデビューは1982年、マライアは1990年だ。
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