リッキー・リー・ジョーンズが、トム・ウェイツと出会ったのは1977年、22歳のときだった。歌手としての成功を夢見て、ナイトクラブやコーヒーショップなどで歌っていた頃。
19歳で家出をしてロサンゼルスへやってきた彼女は、当時、住む家もないまま、友人のアパートなどを転々としながらウェイトレスとして働いて生計を立てていた。
そんなある日、ロサンゼルスでも有名なクラブ<トルヴァドール>で歌うチャンスを得る。その時にトルヴァドールのキッチンで働いていたのが、後の彼女のヒット曲「Chuck E.’s In Love(恋するチャック)」のモデルとなったチャック・E.ワイスだった。
チャックが自分の友人であるトム・ウェイツを彼女に紹介したことがきっかけとなり、二人は恋に落ちる。親しくなった二人は、50年代のビート詩人たちのように毎日朝方近くまで酒場で語り合うようになり、すぐに同棲を始めた。
トムは当時のリッキーの印象をこんな風に語っている。
「ゴージャスなブロンド、小鹿のような眼、そして豪華なあの胸のふくらみ、一目見たとたんあの家出娘にはまいったもんよ」
当時28歳だったトムは、すでにプロ歌手として世に出ており、前年にアルバム『Small Change』を発表したばかりだった。デビューから3枚のアルバムを発表したものの、セールス面では実績を残せなかった彼は疲れきっていた。
そこでレコード会社の援助を受けてロンドンに渡り、滞在中に名曲「Tom Traubert’s Blues (Four Sheets to the Wind in Copenhagen)」を書いた。
Foreign Affairs
Blue Valentine
二人が出会った1977年。トムはアルバム『Foreign Affairs(異国の出来事)』を発表している。その翌年に発表した『Blue Valentine』(1978年)と続けて、トムは彼女との写真をレコードジャケットに使っている。
トムはこの時期、まだ歌手として下積み時代を過ごしていたリッキーのために、「Rainbow Sleeves 虹の袂(たもと)」という曲を書き上げている。同曲は、後に彼女自身が歌うこととなる。
リッキーもトムとの同棲生活の中で「Easy Money」という曲を書き、その曲がローウェル・ジョージ(元リトル・フィート)のソロアルバム『特別料理』(1979年)で取り上げられることになり、24歳でデビューのきっかけを掴む。
1979年2月、アルバム『浪漫』でデビューを果たし、いきなり全米3位の大ヒット。二人の出会いのきっかけとなった楽曲「Chuck E.’s In Love(恋するチャック)」も、同アルバムからシングルカットされて全米4位を記録。翌年のグラミー賞・最優秀新人賞を獲得した。
「あの人の “底辺に生きる” ことへの憧れはよくわかるし、歌も生き方も大好きよ。でも二人で一緒にそれを続けていたら、どちらかが先にダメになってしまう」
彼女が一躍スターダムへの道を歩き始めた頃、二人は別々の道を選択することとなる。この時の別れの情景をトムは後に「Ruby’s Arms」という楽曲にしたためている。
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執筆者
【佐々木モトアキ プロフィール】
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