1991年2月20日、ボブ・ディランはグラミー賞で音楽への功績を称えられて「特別功労賞」を受賞した。
俳優ジャック・ニコルソンの紹介で舞台に登場したボブ・ディランが歌ったのは、「Masters Of War」(「戦争の親玉」)だった。
アメリカを中心とする多国籍軍がイラクに侵攻したのは約1ヶ月前の1月17日。クウェート解放という大義名分のもとに始まった湾岸戦争は、多国籍軍による一方的な展開となる。
アメリカではメディアを通じてその正当性が訴えられ、テレビでは空爆を中心として血の流れない現実感に欠けた映像が流された。そうしたメディア戦略の効果もあり、アメリカの世論は概ねイラクへの侵攻を支持していた。
しかし、ディランはグラミー賞という舞台でそれを真っ向から否定し、この戦争で人の命と引き換えに私腹を肥やしている人たちを糾弾する。
いつか気づくことになるだろう
君たちに死が訪れた時
今まで稼いだ大金を全部つぎ込んでも
君たちの魂は決して買い戻せないということを
「Masters Of War」が作られたのは、キューバ危機によって冷戦の緊張が高まった1962年から1963年頃と言われている。
それ以降、戦争が起きる度にディランをはじめとして、この歌は多くの人たちに歌われてきた。これから先も戦争がなくならないかぎり歌い継がれていくのだろう。
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