ビル・ウィザースはソウル・ミュージック、または音楽業界において独特な存在だ。
長い軍隊生活の後、飛行機修理工場の工員などを経て、1971年に32歳という遅咲きデビューを果たしたのは1971年。
ソウル・ミュージックの枠だけに囚われず、ゴスペルやブルーズ、ジャズやフォーク、ロックなども取り入れた独創的かつシンプルな音楽で人気を集め、数々のヒットにも恵まれた。
にもかかわらず音楽業界とその周辺に失望し、1985年にリリースしたアルバムを最後に、すっかり音楽業界から身を引いてしまう。
しかし、今でも彼の音楽はラジオでオン・エアされ、多くのミュージシャンにカヴァーされ、愛され続けている。「リーン・オン・ミー」や「消えゆく太陽」、「ラヴリー・デイ」などは、今やスタンダード・ナンバーと言ってもいいだろう。
2009年にはドキュメンタリー映画「Still Bill」がアメリカで公開され、2015年にはロックの殿堂入りを果たすなど、ビル・ウィザースの音楽に向けられる注目と尊敬は今もなお止むことがない。
「それぞれの世代は、男の弱さを正当化する芸術形態(アート・フォーム)を必要としている。もし男らしさが激しい争いだけを象徴するなら、男なるものいかにして、愛を語り、兄弟愛を支え、人間性について示すことができるのだろうか?」 -ビル・ウィザース
家族や兄弟への愛を大切にする情に熱いビル・ウィザースの書く、飾らない率直な歌詞が聴く者の心に響く。ビル自身が祖母との思い出をかみしめるように歌った「グランマズ・ハンズ」は、そんな彼の人柄がにじみ出た人気の1曲だ。
1938年7月4日、ウェスト・ヴァージニア州スラブフォークという田舎街に生まれたビル・ウィザースは、6人兄弟の末っ子で、幼い頃に父親を亡くし、母と祖母に育てられた。
自身のプライベートについてはほとんど語らないビル・ウィザースだが、この歌を歌う時には、しばしば彼が祖母との思い出について語る様子が見られる。
1973年にリリースされたライヴ・アルバム『ライヴ・アット・カーネギー』の中でビルは、幼い頃にいつも祖母と一緒に教会へ行った時の楽しかった思い出を、ジョークも交えてとても饒舌に語っているのだ。
ライヴ・アット・カーネギー
(BBCコンサート)
おばあちゃんの手
日曜の朝 教会で手を叩き
おばあちゃんの手
タンバリンを上手に叩いた
おばあちゃんの手
よく注意も発してくれた
「ビリー、そんなに早く走っちゃいけないよ
転んでガラスでけがをするかもしれないし、
草むらの中から蛇が飛び出してくるかもしれないよ」
おばあちゃんの手
ラストには「天国へ行ったらまずはおばあちゃんの手を探すよ」と締めくくられる、亡き祖母への愛情に満ちたこの歌は多くの共感を呼び、今でも様々なミュージシャンにカヴァーされている。
(このコラムは2017年9月18日に公開されたものです)
ベン・ロンクル・ソウルとグレゴリー・ポーターによるカヴァー
ウィリー・ネルソンとメイヴィス・ステイプルズによるカヴァー
参考文献、引用元:waxpoetics japan No.03 サンクチュアリ出版

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