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「TAP the COLOR」連載第177回
ブルース(正確にはブルーズ)を聴いたり目の前の演奏に接したりすることは、言うまでもなく一つの体験であると同時に、それは時と場所を巡る旅でもある。スタート地点はミシシッピ川、綿花畑、ハイウェイ61……といったところだろうか。長い旅路では様々な人生、苦悩、歓喜といった風景を見ることになる。旅人たちはそれを決して忘れることはできない。
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ハウンド・ドッグ・テイラー『Hound Dog Taylor and the HouseRockers』(1971)
シカゴのブルーズ・レーベル「アリゲーター」は、元々はオーナーがハウンド・ドッグ・テイラーのレコードを作りたいという一心で立ち上げたもの。1950年代から活動するも、アルバム録音はなし。54歳でのデビュー作であり、記念すべきレーベルの出発点となったのがコレだ。ザ・ハウスロッカーズは、ハウンド・ドッグを親分としたギター2、ドラム1の3人組。エルモア・ジェイムス直系のスライドギターが唸る。1975年に60歳で亡くなった。
アルバート・コリンズ『Ice Pickin’』(1978)
最初の1音のインパクト、そのエグさ、激しさでブルーズ・ファンを痺れさせてきた男、アルバート・コリンズ。オープンFマイナーにチューニングしたテレキャスで、感情むき出しのソロを弾く。1958年に録音開始。本作はアリゲーターに移籍しての復活作。1982年に来日してライヴ録音も残した。晩年まで精力的に活動。1993年に61歳で亡くなった。ちなみに、ブルーズを一度も聞いたことがなかったロバート・クレイは、高校のパーティに来たコリンズのプレイを見て衝撃を受け、ブルーズの世界に足を踏み入れたという。
リトル・ミルトン『Blues’n’Soul』(1974)
サザン・ソウルの名門、あのスタックスからリリースされたリトル・ミルトンの代表作の一つ。象徴的なタイトル通り、ブルージーなソウル、あるいはソウルフルなモダン・ブルーズを収録。50年代から吹き込みを開始。60年代にR&Bチャートでヒットを放つ。こちらも晩年まで南部のチトリン・サーキットで精力的に活動。絶大な支持を受けながら、2005年に70歳で亡くなった。
ローウェル・フルソン『Tramp』(1967)
のちにオーティス・レディングもカバーした、ファンキー・ブルーズの元祖として知られるタイトル曲(R&Bチャートで5位を記録するヒット)を収録したフルソンの名作。B.B.キングが「眠れる巨人」と称えた人であり、正当な評価には縁がなかった人だが、それでも洗練さと田舎臭さが混じったような、何とも言えない味わい深いブルーズの数々は、聴く者の心をとらえて放さない。1946年にウエストコーストで録音を開始。50年代にチェスなどから多くのヒットを飛ばし、64年にケントへ移籍。本作につながった。1980年に来日。生涯現役のまま、1999年に77歳で亡くなった。
*参考/『ブルースCDガイド・ブック2.0』(小出斉著/ブルース・インターアクションズ)
(『THE BLUES』シリーズはこちらでお読みください)
『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(Feel Like Going Home/マーティン・スコセッシ監督)
『ソウル・オブ・マン』(The Soul Of A Man/ヴィム・ヴェンダーズ監督)
『ロード・トゥ・メンフィス』(The Road To Memphis/リチャード・ピアース監督)
『デビルズ・ファイヤー』(Warming By The Devil’s Fire/チャールズ・バーネット監督)
『ゴッドファーザー&サン』(The Godfathers And Sons/マーク・レヴィン監督)
『レッド、ホワイト&ブルース』(Red, White & Blues/マイク・フィギス監督)
『ピアノ・ブルース』(Piano Blues/クリント・イーストウッド監督)
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